ベルギー、KRCヘンクのクラブ哲学と経営モデルとは

柏レイソルに所属していた、日本代表MFの伊東純也選手が

ベルギー1部リーグへの移籍が決まりました。

その彼の新天地となるベルギーのサッカー界は

どのようなクラブ哲学を持っているのでしょうか。


ベルギーの隣国にはドイツ・フランス・オランダがあります。

海を渡ればイギリスがあり、

一歩国境を跨げば世界でも名だたるサッカーリーグがある環境です。


しかし、ベルギーにはサッカーに関して

語るべき過去の歴史があるような国ではありませんでした。

1988年、プロサッカーチームを存続させるために、KRCヘンクが誕生しました。

それから結果を残し、ヨーロッパで最も注目されるチームの1つに成長してきた。

注目されている理由は結果だけはなく、ヘンクの経営モデルにあります。


ヘンクの経営モデルは、自給自足の原則に基づいています。

一つの企業になるのではなく、地元の社会と結びついたクラブであり続けています。

今のJリーグと同様で地域密着に特化し、地域と多くの会社で運営されていたのです。

「選手の売却を強いられているクラブだと見られたくはありません。

そうではなく、質の高い選手を数多く輩出するヨーロッパでも特別なクラブだと見られたい」

という信念があるのです。

なので、ヘンクのクラブ哲学は「優秀なプレーヤーを育成する」

という唯一の目的に集約されています。

そのために2つのことに力を入れています。


①地元のタレントを育てる

②スカウティング


①のタレントを育てるために、施設や練習環境を整えています。

学習室、ビデオ分析ルーム、医療とフィジオセラピーのための医務室、

リハビリ用プールまでもが備えられたトレーニングセンターがあります。

この施設はホームスタジアムであるルミナス・アレナに隣接しており、

トレーニングと練習が行える環境が作られています。


そこに通う多くの子供たちの中でも、12歳までは多くても週3回しかトレーニングをしません。

その代わり、サッカーと直接関わりのないスポーツアクティビティ

(ボクシング、柔道、体操など)を行っています。

他の競技のアジリティをサッカーに活かすのは非常に重要です。

特に幼少期に神経系トレーニングを行うことは、人間本来の能力を消すことはありません。

それらの要素が他競技に入っていることは多分に考えられ、

日本でも積極的に取り入れられているのが現状でしょう。

12歳以降の成長期になって初めて、アスリートとして扱われます。

技術、戦術についての本格的な指導を受け始めます。

そして16歳前後になった時にはすでに、

プロ選手としてデビューする準備が整っているのです。


②のスカウティングにおいて、ヘンクは外国人タレントを発掘する手腕も優れています。

フィジカルコーチ、スカウト、データアナリストの共同作業で、

30万人を超えるプレーヤーの情報を収めたデータベースを使い、

選手としての潜在能力、伸びしろ、

トップチーム昇格時に直面し得る困難などについて予測し、

スカウティングをしているのです。


教育やスカウティング能力が高いのは分かっていただけたでしょう。

しかし、この「優秀なプレーヤーを育成する」という唯一の目的には

そうせざるを得ない理由もあるのです。


☑︎大金持ちのオーナーやスポンサーがいない

☑︎スタジアムからのマッチデー収入やTV放映権収入も多くはない

☑︎クラブが存続・成長するには、移籍金収入が不可欠


優秀な選手たちをチームに引き留められる状況ではないのです。

最近のビッグクラブは16歳の選手にもアプローチしてきます。

トップチームは、ヘンクが出せる契約金の10倍もの年俸を支払い、獲得に動き出します。

それを引き留めるだけの材料はベルギーにはありません。

選手の売却によって利益を積み上げ、それをまた教育部門に再投資することによって、

ヘンクは毎年毎年レベルの高い選手を輩出し続けているのです。

金銭面でベルギーは他クラブチームより劣っている部分があるため、

教育部門に力を入れた経営モデルを確立させているのです。


もっとチャレンジしたい、成長したい、と考えている伊東選手にとって、

教育部門が確立しているベルギーという地は最適な地なのではないでしょうか。


そして今、脚光を浴びているのが、先のアジアカップで優勝したカタールです。

自国と他国、両方の文化と言語を学ぶスタイルを確立させています。

この2つの組み合わせが最強のコミュニケーションツールを生むと気づき、

スペインからサッカーを輸入し、国のプロジェクト強化として取り組んでいます。

他国の言語を学ぶことで聴覚が強くなります。

「聴く」能力は、日本人も含め弱まっており、視覚から入ってくる二次元の情報に頼り、

聴覚から入る三次元の情報を理解できなくなっているのです。

メリットは他にもあり、海外移籍にスムーズに適応でき、

スペイン人指導者と円滑なコミュニケーションを行えます。

海外での活躍は言語習得が必要で、戦術が複雑化する昨今、

監督の指示を理解できないのはリスクが高まります。

また言語習得は知的レベルを上げ戦術理解をより深めることができるのです。

こうしてカタールはサッカーの哲学を構築し、W杯開催を迎えようとしているのです。


日本のサッカー界もベルギーと同様に、

優秀な選手を引き留めることが出来ていません。

日本から優秀な選手が海外へと輩出されていく理由は金銭面もあるだろうが、

それ以上に技術的な面が強いのではないかと考えます。

昨今、イニエスタ・ビジャ・ポドルスキーなど、

世界的にも有名な選手がJリーグでプレーをしています。

そうした流れを断ち切らないためにも、日本サッカー界のクラブ哲学とは何か、

経営モデルとは何かをベルギーやカタールの例を踏まえ、

改めて考えていく必要があるのではないだろうか。


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”スゴイ先生” 石川貴之 オフィシャルサイト

トップレベルのコンディショニングエキスパートが集うサロン<カラダラボ>の代表。 自身のコンディショニング技術の集大成とも言える、「ゼロ・グラヴィティ理論」で 世の中の間違ったトレーニング方法やカラダづくりを、正そうとしている。

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