ゼログラヴィティ理論 - 理論編 -
サピエンス全史から見る身体作りの考え方
人間のルーツを辿ると、四足歩行のチンパンジーから二足歩行の人間になったといわれていいます。
その進化の過程で、二足歩行を拒んでいるときがあったのです。
約250万年前に人間文化が始まり、現代まで歴史を刻んできました。
食物連鎖の中で、もっとも低い層にいた人間は、厳しい環境下で生き抜くために、常に生死と隣合わせの生活を送ってきたのです。
その自然環境が身体作りのトレーニングになっていたのです。
歴史の道筋は3つの重要な革命が決めました。
① 認知革命 7万年前
② 農業革命 1万2000年前
③ 科学革命 500年前
人類が地球上で生きていく大きな流れの中で、この3大革命が歴史・文化・身体を変えるターニングポイントになったのです。
地球は45億年前に形成されました。
それに比べると短い時間の中で大きな進化をしてきたに違いありません。
我らの祖先が、四足歩行から二足歩行になったのは、250万年前と推測されています。
進化した人類は手で身体を支える必要がなくなり、自由になった手で複雑な作業がこなせるようになりました。
脳の発達に伴い、道具を使い、火をおこし、狩りをし、優れた学習能力を持ち、複雑な社会構造を作り、食物連鎖の頂点へ昇っていきました。
自然を感じるための五感
当時の人間は食物連鎖の中位にあり、狩りをするどころが逆に襲われる危険性がありました。
「食べなくては生きることができない」ではなく、「生きるために動物を殺めなければならない」という環境でした。
いつでも逃げられる状態で、狙った動物を正確に捕まえる必要がありました。
視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五感をフル活用して、地球・自然・動物のことを常日頃から意識しなければ生存競争に負けてしまう時代でした。
今では五感は生きるためではなく、欲を満たすために使われています。
例えば、視覚は動物を捕まえるために必要な感覚器でした。
動物を目に入れる機会は、動物園内に限られる現代とは大きく異なります。
時代が進むにつれ、自然を感じる感度が落ちているのは間違いないでしょう。
本来、地球は必要なものを必要なときに与えようとしており、それをしかるべきタイミングで受け入れることで、自然界との共存が可能になります。
人間も動物や植物と同じように地球に生かされている生物なのです。
現代人は化学の発展により、自然への感度が低下しました。
あふれている情報に振り回され、地球に生かされているにもかかわらず、自然と同調することを忘れ、ヒトは欲求を満たすことを選んだのです。
自然と不自然の違いを感じられず、自らの感性で必要なものを判断できなくなりました。
スマートスピーカーに「今日の天気は?」と投げかけている声はロボットの音声に聞こえ、人間の機械化が進んでいるように感じます。
ダイエットブームの現代において、炭水化物を抜いたり、ウエイトトレーニングを行ったりすることが主流です。
自然界の法則にしたがって生活をすることで、適正な体重、体型になるのです。
当時は木の実や果物が豊富にあり、手を伸ばせばすぐに食べることができ、身体に必要な栄養素が自然界で補えていたのです。
現代でいうと「旬のもの」を食べることが、それに近いのでしょう。
深く自然を知ることは、脳で考えることなく、五感で必要なものを感じ取れるようになります。
スリムな体型を「作る」のではなく、自然と理想の体型を獲得でき、無理の無いダイエットの手法が確率されるでしょう。
生死と隣り合わせになるような自然環境下に行くのも一つの手法に思えてきます。
四足歩行から二足歩行への変化に伴った代償
250万年前、脳と中枢神経系の発達により、歩行動作に変化が起きました。
移動手段を四足歩行から二足歩行に変えたのです。
両足を手とし、歩行以外の複雑な仕事をこなし始めました。工夫や思考を重ねて、種々の道具を作る家庭で大脳が発達したのです。
脳の発達は身体に多くの負担をかけ、安静時の人間が消費する脳の消費エネルギーは25%に対し、ヒト以外の霊長類が、安静時に消費する脳の消費エネルギーは8%と大きな違いが生まれました。 その大小を2つの方法で支払ったのです。
・多くの時間をかけ食べ物を探すようになった
・上腕二頭筋を発達させるエネルギーを、中枢神経系の発達に回した
「人間は進化している」と仮定した場合、上腕二頭筋を鍛えて筋肥大させることは、脳の発達の邪魔をしていると考えられます。
上腕二頭筋のエクササイズは中枢神経系の発達と相反していることがわかります。
人間は脳へのインプットとアウトプットを行い、認知・判断・行動の意思決定を繰り返します。
上腕二頭筋を鍛えることは、その意思決定のスピードを鈍化させ、運動パフォーマンスを低下させることになるでしょう。
意思決定を求められるビジネスマンいおいて、情報伝達スピードが鈍化すると、仕事のパフォーマンスは圧倒的に低下します。
安易に腕立て伏せを行い、上腕二頭筋を鍛えるのは控えるべきです。
人間は四足歩行ではなく、直立で移動することを選択したため、上腕二頭筋で身体を支える必要がなくなったのです。
中枢神経系の発達が人間の進化そのものとするなら、上腕二頭筋は二足歩行に見合う筋肉量が求められるでしょう。
二足歩行による肩こり・腰痛の発生
四足歩行の身体の使い方が重要なのは、直立歩行に欠点があるからです。
頭蓋骨で特大の脳を覆い、保持しなくてはならなり人間が、直立の姿勢に順応するのは難題でした。
直立歩行になり、「人は卓越した視野と勤勉な手を獲得する代償として、腰痛と肩こりに苦しむことになった」とサピエンス全史で知られるユヴァル・ノア・ハラリ氏は記しています。
肩こり・腰痛は今に始まったことではありません。
四足歩行から二足歩行に進化した際に、人間が「自由な手」を手に入れる代償として支払ったものです。
改善する方法は四足歩行になることですが、生活の中でスマートフォンやパソコンを使うことができることがなくなってしまいます。
私たちは四足歩行に戻ることは不可能なのです。
二足歩行で肩こり・腰痛を改善する方法は2つ。
①上腕二頭筋の発達を止め、中枢神経系のトレーニングを行う
②二足歩行で四足歩行の身体の使い方を獲得する
この2つが直立歩行の欠点を進化に転換させる方法でもあります。
二足歩行によって女性・赤ん坊に起きた悩み
女性は出産をする機能を持っているため、男性に比べ身体が複雑に形成されています。
子宮・卵巣は女性にしかない臓器です。
東洋医学では五臓六腑ではなく、六蔵七腑と考えられ、女性の寿命は男性より長いといわれています。
その反面、男性には起こりえない女性ならではの悩み・症状があるのです。
●女性によく見られる病気の代表例
・月経症/月経不順/無月経/頻発性月経/稀発性月経
・不妊症/つわり/流産/早産/陣痛/乳腺炎
・膀胱炎/冷え性 ・更年期障害
挙げればキリがないほど症状はあります。
出産は命を落とすことも考えられ、現代でも死と隣り合わせです。
人間は進化の代償として腰痛・肩こりに苦しみました。
直立歩行になった女性は男性よりもさらに重い代償を支払ったのです。
2つの歩行動作の特徴から、女性の身体への負担がましたことが分かるでしょう。
●四足歩行の生物の特徴
・頭(脳)が小さい
・体幹部が太く、産道が広い
●二足歩行の生物の特徴
・頭(脳)が大きい
・体幹部が細く、産道が狭い
歩行動作の特徴から、二足歩行の生物は赤ん坊の脳が小さい段階で出産した方が、死のリスクが小さくて済むのです。
つまり、赤ん坊は脳が発達し、身体が大きくなった状態で生まれてくるべきですが、母子ともに生存し出産を終えるために、未発達な状態で生まれてくる必要があるのです。
脳が大きくなり、様々な仕事を手でこなせるようになりましたが、女性は出産へのリスクが高まったのです。
昔は麻酔も帝王切開もない時代ですから、今では考えられない人数が出産でなくなっていることが想像できます。
また、保育器や新生児集中治療室がない時代は、生まれてきても息絶えた赤ん坊も数多くいたでしょう。
他の動物と比べ人間は、生命維持に必要なシステムが未発達な段階で生まれます。
子供は誕生後まもなく駆け回ることができる。
子猫は数週間で母親の元を離れ、単独で食べ物を探し回ります。
それに比べ、ヒトの赤ん坊はひとりでは何もできません。
何年にもわたり母親に守られ、食物を与えてもらわなければ生き残ることができないのです。
今では知性を身につけるために、親から様々な教育を受けています。
福沢諭吉先生は「霊長たる人間として、生きるだけが目的であれば、アリ以下である」と表現しています。
つまり、四足歩行の馬や猫と同じと言えます。
二足歩行になった真の目的は「世の中のため」「人のため」と意識し、学問を志すことです。
人間は脳・中枢神経・末梢神経の発達までに時間を要し、見事に身体の上部から下部に向かって発達します。
教育を受け、社会生活に順応し、ひとりで生きていくことができるのです。
一般的には、自分自身で働いて対価を得て、一人前に食べられるようになるまで、生後18年から22年必要と考えれています。
大学院や医学部に進学した場合はさらに歳月が必要です。
馬は5ヶ月程度で離乳させられると聞きます。
四足歩行の生き物に比べ、人間は自立するまでに非常に手がかかります。その理由は未発達な状態で生まれてくること、知性を身につけなければ、高度な社会環境下で生活することができないこと、この2点です。
●人間の成長の過程 頭部の発達(首がすわる)
↓ 手が発達(哺乳瓶をつかめる)
↓ 体幹部の発達(ハイハイができる)
↓ 下肢の発達(直立歩行ができる) ↓ 知性の発達(両親や学校で教育を受ける)
↓ ひとりで生きていく(社会人になり働く)
女性が支払った代償
四足歩行から二足歩行になることで、女性が代償として差し出したものは2つです。
①妊娠し、体幹部が大きくなり、腰痛と肩こりに苦しむことになった
②赤ん坊を未発達な状態で産むため、出産での命の危険性が高まる
①の改善方法は下記の2つです。
・上腕二頭筋の発達を止め、中枢神経系のトレーニングを行うこと
・二足歩行で四足歩行の身体の使い方を獲得すること
人間は体幹部を細くすることで、直立歩行になじんできました。
妊娠は赤ん坊がお腹にいることで、体幹部が大きくなります。
その状態で上腕二頭筋を使い、重いものを持てば、身体にかかる負担は計り知れません。
妊娠初期に重たいものを持つと、流産の危険性が高まるのは、このことから理解ができます。
出産経験のある女性の体験談より、四つん這いの姿勢でいることは、薬であると聞いたことがあります。
四足歩行が身体への負担を軽減することがわかります。
②について、中枢神経系の発達を選択した人間は、赤ん坊の脳が大きくなったことを受け入れるしかありません。
母体に関しては二足歩行で四足歩行の動作を体現できれば、以上の2つを獲得できるため、出産の危険性は軽減できるでしょう。
・直立歩行で必要とされる適正なウエスト
・平滑筋(子宮・卵巣)の柔軟性
子宮口や産道が硬いと、出産が遅れます。
赤ん坊がお腹から出てこないので、帝王切開になることもあり、母体への負担が高まります。
女性独特のしなやかな身体の獲得が必要です。
過度に重たい物を上げるウエイトトレーニングは人間のしなやかな動作が失われます。
女性が重たいものを持ち、ダイエットに取り組む姿は不自然です。
高齢出産が時代背景にある今こそ、自然な形を取りもどしながら、新たな視点で身体作りに取り組むべきです。
生まれてきた赤ん坊とハイハイで接していくと、母子ともにより健康な身体作りができるのです。
農業革命で考える「賃貸派」と「持ち家派」
人類は250万年にわたり、植物を採取し、動物を狩って食料としてきました。
これらは家畜ではなく、人間の介在なしに暮らし、繁殖していた動物です。
人間は現代のように一つの場所に定住することなく、遊牧民のように移住しながら過ごしていました。
食料を求め、住む土地を変えていたからです。
今の私たちは、何千万円もの家を購入し、家族というコミュニティーが一つの場所に定住します。
ローンを組むため、定職につき、それに縛られ生活しています。
万が一の場合には団信保険制度が適用されます。 遊牧民から定住することを選択する鍵になるのが、「農業革命」なのです。
1万2000年前に、いくつかの動植物種の生命を操作しました。
人間は1日のほぼ全ての時間と労力を農業に傾け始めました。
朝日が昇ってから夕日が落ちるまで、畑を耕し、種をまき、作物に水を与え、雑草を抜き、羊を放牧し飼いならしました。
より多くの果物、穀物、肉が手に入るだろうと考えたのです。
ここまでの話は現代の「賃貸派」「持ち家派」に通ずるものがあります。
例えば、震災・災害が起きた際に持ち家の方の場合、土地への愛着もあると思いますが、移住できないのが現実です。
農業を営んでいる型であれば、「家」「職」のどちらも失うことになります。
賃貸者の場合は、有事の際に失うものは「職」だけです。 職業がどの場所でも成り立つのであれば、「家」「職」を失わず同様の生活が送れます。
賃貸はは遊牧民に近い生活を送り、持ち家派は、農業革命後の生活に近いといえます。
・遊牧民派 = 賃貸派
・農耕民族派 = 持ち家派
農業革命によって起きた人々の生活の変化 四足歩行から二足歩行に変化し、人間は様々な代償を支払ってきました。
農業革命も例外ではありません。
食物・家畜側から考えると、水も肥料も毎日一定の時間に一定の量をもらえますので、雑草種であった小麦は極楽な生活になったとも考えらえれます。
人間は定住地を構えて一日中炎天下の中、食物や家畜の世話をしています。
身体が蝕まれて行くことを考えもせず、「時間」という代償を支払うことで、豊富な食物を得られるようになっていきました。
人間の身体は、農作業のために進化していない。
「石を取り除いたり、水桶を運んだりするのではなく、リンゴの木に登ったり、ガゼルを追いかけたりするように適応していたのだ。 人類の脊椎や膝、首、土踏まずにそのつけが回された。 古代の骨格を調べると、農耕への移行のせいで、椎間板ヘルニアや関節炎、ヘルニアといった、実に多くの疾患がもたらされたことがわかる」
ユヴァル・ノア・ハラリ氏の名言です。
カラダラボでも農業に携わる方をメンテナンスする機会があります。
他の職種と比べると、圧倒的に腰痛の悩みを抱えている方が多いのです。
ホワイトアスパラの収穫を体験したことがあります。
1本ずつ収穫するため、毎回中腰になる必要があります。
身体の構造上、中腰は腰部・臀部の筋肉を硬化させるため、ギックリ腰の危険性が想像以上に高まるのです。
人間が直立歩行をはじめたのが250万年前で、農業革命が1万2000年前に起きたといわれています。
約249万年前の間、木を登ったり、動物を追い回したり、狩猟採取民としていきてきました。
身体の構造や身体の使い方も農業に適応していなかったのです。
腰痛を悪化させる農作業 直立歩行への進化により、思い脳を支えるため、腰痛を発症しました。 農業革命で農耕民族に変化してから、椎間板ヘルニアが発症しました。
農作業により、腰痛の症状が明らかに悪化しているのです。
・四足歩行から二足歩行 = 腰痛
・狩猟採集民族から農耕民族 = 椎間板ヘルニア
腰痛であれば、股関節・ハムストリング・脊柱起立筋の柔軟性を向上させれば、容易に改善ができます。
日常生活にも大きな支障をきたすことはないです。
椎間板ヘルニアは通常の腰痛の改善方法に加え、左右の仙腸関節のバランスや、半腱様筋・膜様筋へのアプローチが必要です。
より高度な施術テクニックが求められます。
外科的な処置が必要な場合もあり、幹部にブロック注射を打ち、炎症を止める方法や、最悪の場合は手術を必要とする場合もあります。
運動量の少ないデスクワークでさえ、仕事を継続していくことが困難です。
狩猟採取民族から農耕民族になったことで支払った代償は、非常に大きなものであったと考えられます。
椎間板ヘルニアは今でも多くの人を苦しめている症状です。
狩猟採取民族が木を登り、ガゼルを追い回していたときの身体の使い方を獲得できれば、椎間板ヘルニアは発症しません。
1万2000年より前の時代は、四足歩行の身体の使いかたが残っていいたのです。
我々が目指すべき身体作りは、四足歩行の身体の使い方を、二足歩行で体現することです。
そのとき、更なる進化が約束されているでしょう。
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